僕が大きな影響を受けた日本人作家を思いつくまま挙げるならば、小説家では、安部公房。脚本家では、山田太一となる。手に入る限りのDVD やシナリオ集、小説やエッセイ集は、いつでも取り出せるように、書庫の一番見やすい位置に収まっている。僕が好きな作品は、「岸辺のアルバム」「異人たちとの夏」「想い出づくり。」「ふぞろいの林檎たち」「男たちの旅路」など。TV の画面に映る山田太一という名前(クレジット)を初めて意識したのは、子供の頃にたまたま親と観た「男たちの旅路」だった。それまで小説家の名前には注目してはいたものの、脚本家の名前を記憶に残すようになったのは、「激突!」や「地球最後の男(アイ・アム・レジェンド)」などの、作家にして脚本家のリチャード・マシスンと山田さんくらい。“脚本・山田太一”。この衝撃は、それくらい特別だったのだ。人間ドラマの背後に、拭いきれない登場人物たちの“トラウマ”、時代と社会に転移する“病巣” を真っ向から扱っていたからだ。特に「シルバー・シート」や「車輪の一歩」が切り出して見せた人間社会の“断面” は、当時のゴールデンで流れるようなテレビドラマでは、出逢うことのなかった異質なものだった。活きた“キャラクター” やリアルな“時代” を造形するには何が必要なのか? 僕が創るゲームに“社会性” があるとすれば、それは子供の時に衝撃を受けた山田さんのドラマに遡る。僕にとっての山田作品は、娯楽を超えたストーリーテリングのバイブルであるからだ。